1本の歯が抜けると口のなか全体の環境が変わる
高血圧や心臓病、糖尿病といった生活習慣病については皆さん、予防を心がける一方、歯を普段から念入りにケアしているという人はあまり多くないように感じます。 歯が痛い、歯茎が腫れたなど、何か特別な症状がないと、あまり歯の状態を気にかけることがないのです。しかし歯の本数と体の健康はとても密接な関係があります。
歯の本数が少なくなってしまうと、骨折しやすくなったり、死亡リスクが上がったりすることがさまざまな研究で明らかになっています。体だけではありません。脳にも悪い影響をおよぼします。歯を失う大きな原因は歯周病なのですが、歯周病になると認知症になるリスクが高まることがわかっているのです。
厚生労働省と日本歯科医師会が推進している「8020運動」をご存じでしょうか。
「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動のことで、1989年に始まりました。 30歳で歯が20本以上残っている人の割合は、運動を開始した当初は1割 程度だったのが、2016年に実施した厚生労働省の調査では約5割にまでアップしました。
目標に向けて進展していることは素晴らしいのですが、果たして本当にこれでよいのかと私は考えています。残っている歯が20本ということは、8本の歯がないということです。
1本抜けただけでも他の歯に影響があるのですから8本もなくなればその影響はかなり大きくなります。
事実、歯の本数の減少は、体全体にさまざまな変化を、もたらすことが明らかになっています。